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札幌高等裁判所 昭和26年(ネ)176号 判決 1952年10月24日

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人は、原判決を取消す、被控訴人の請求を棄却する、訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とするとの判決を求め、被控訴人は控訴棄却の判決を求めた。

双方の事実上及法律上の主張の要旨は、被控訴代理人に於て、被控訴人は昭和十八年十二月三十日に控訴人から原判決目録記載の土地の一部を買受ける契約をなし、次で昭和二十年一月二十二日に売買の目的を右目録第一記載の土地三筆とすることに合意が成立し、同時に所有権を譲受け、同年五月十二日に引渡を受けた。そうしてその三筆の内三百一番地の八宅地六十坪はその現況が宅地であつて農地ではなく、また同番地の九及び同番地の十は農地であるが、控訴人は耕作の用に供する目的で買受けたものであるから、当時の農地法令によれば許可を要せず、これを要することとなつた農地調整法第二項改正法の施行以前に既に引渡を受けているのであるから、許可がなくても所有権の移転は有効であるとのべ、控訴代理人に於て被控訴人の右主張事実を否認し、仮に被控訴人主張の売買契約が成立したとしても、目的物の引渡がなく、そうして所有権移転につき許可がないから、被控訴人は所有権を取得しないとのべた外は原判決記載のとおりである。

(立証省略)

理由

被控訴人が原判決第一目録記載の土地三筆を、控訴人から譲受けその所有権を取得したと云う被控訴人の主張が真実とみとめられることは、原判決に説示されているとおりである。当審証人菅井義次同竹田肇の証言及び控訴本人の当審に於ける供述によつては右認定はなくくつがえされない。

右三筆の土地の内北見市三百一番地の八の宅地六十坪が農地でないことは当審証人川尻キヨの証言によつて明かであるからその所有権の譲渡につき知事の許可を要しないことは云うまでもない。その他の二筆は農地であるが、被控訴人は耕作の目的に供するために所有権を取得したものであり、昭和二十年五月十二日に引渡を受けたことは当審証人川尻キヨの証言によつて認められ、控訴本人の当審に於ける之に反する供述は信用できない。然らば被控訴人の所有権の取得は、知事の許可がなくても有効となさねばならない。

よつて被控訴人の請求を認容した原判決を相当とし、民事訴訟法第九十五条第八十九条を適用して主文の如く判決する。

(昭和二七年一〇月二四日札幌高等裁判所第二部)

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